連載#2 「想いだけじゃ、ダメだ」— 暗闇で見つけた、一筋の光

2025/11/26

こんにちは!
medeluのフラワーデザインを監修している古賀です。
お花を愛でるみなさんに産地のことをもっと知ってもらいたくて記事の連載をスタートしました。

この連載では、私たちが普段手に取る花々を育てている人々に直接会って、生産にかける想いをうかがってきました。
その内容をお伝えしていきます。

第1回 バラ農家 楢原さんに伝統と未来を添えて

「想いだけじゃ、ダメだ」— 暗闇で見つけた、一筋の光


バラ生産を始められて30数年が経過し、信頼と実績を積み上げてきた楢原さんですが、その過程は簡単なものではありませんでした。

バラ作りは想像を絶するほど難しく、長いトンネルの中を歩くような日々だったといいます。
「最初の15年、いや20年近くは、自分が納得いくようなバラなんて全然作れなかった。本当に、うまくいかなかった」

次第に土での栽培に限界を感じ、2005年頃から、水と肥料で育てる「養液栽培」へと切り替えを始めます。

そして、最大のピンチが訪れたのは7〜8年前。経営が悪化します。
思ったようにバラが売れない…このままじゃだめだ…!
それまで土での栽培と養液栽培の半々だったのを大きく方向転換。
リスクをとって融資を受け、完全養液栽培へ。
「自分の考えに、『思いきり』がなかったんです」

しかし、全額融資は受けられず、足りない設備はどうしたのか尋ねると、
「夜な夜な、自分で作っていました。自作です」

一日の作業を終えて、夜、暗いハウスの中で、一人、設備を組み上げる。
そんな経験が楢原さんを変えました。

「悪い思いを、やっと断ち切れた。あの時、『想い』だけじゃなくて『実行』することが大事なんだと、心の底から気付けたんです」
変化を恐れず変えていく、自ら動く。
発想を転換することで、長いトンネルを抜け出し、進むべき道を拓いてくれました。
この「実行力」こそが、今の楢原バラ園の土台となっています。

【フラワーデザイナー古賀の視点】

自分を変えたからこそ辿り着いた輝き

栽培方法を変えるなどさまざまな試行錯誤を経て、品評会で賞を受賞するほどの高品質のバラの出荷を続けている楢原さんだが、その成功の陰では、華やかな”バラ”からはイメージもつかない、重たい「自分自身との戦い」を乗り越えた経験があったのだと感じた。

変化を恐れない覚悟、始めたらあきらめずにやりきる。
言葉にすれば簡単だが、実際にそれを実行して成果を出すのは誰もができることではない。

「想い」だけでなく、その手で「実行」してこそ、未来は変わる。
その強さを秘めた一輪は、変わりたいと願いながらも迷う私たちの背中を、そっと押してくれる気がした。


ふと立ち止まりそうになった時、このバラを見つめてみてください。
暗闇を越えてきたその凛とした姿が、あなたの踏み出す小さな一歩を、静かに応援しています。

次回予告 12月3日配信予定
第3回「継がなんっちゃろ」— 息子の静かな決意と、父の本音

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2025/12/04

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