2026/03/18
こんにちは! medeluのフラワーデザインを監修している古賀です。 お花を愛でるみなさんに産地のことをもっと知ってもらいたくて記事の連載をしています。
この連載では、私たちが普段手に取る花々を育てている人々に直接会って、生産にかける想いをうかがってきました。
現在、秋山洋三さんが手がける品目は10を超えます。
ブプレリウム、トルコキキョウ、アストランチア、グラスペディアなど。
そして、その年ごとに加わる試作の花たち。
多品目とひとことで言っても、その中身はとても濃い。
秋山さんの育て方は、少し独特です。
新しい品目を導入するとき。
秋山さんは、最初の1年を「観察の時間」にあてます。
すぐに理想の形を目指して手を加えるのではなく、まずはその花がどう育つのかをじっくり見る。
どんなタイミングで成長が伸びるのか。
水はどのくらい欲しがるのか。
暑さや寒さにどこまで耐えるのか。
「まずは、その花の雰囲気をつかむんです」
すぐに答えを出そうとはしません。
植物の様子を見ながら、その花がどんな性格を持っているのかを感じ取っていきます。
そして2年目。
ようやく本格的に手を入れていきます。
肥料の量を変えたり、植え付けのタイミングを調整したり。
こうして数年かけて、その花に合った育て方を見つけていくのです。

こうした育て方をする理由は、とてもシンプルです。
花には、それぞれ違った「癖」があるからです。
例えば、光。
日が短くなると花をつける植物もあれば、日が長くなることで花芽をつける植物もあります。
温度も同じです。
一定期間の低温を経験しないと花芽をつけないものや、特定の温度条件で生育が大きく変わるものもあります。
さらに、土の状態にも好みがあります。
酸性やアルカリ性、水分量、肥料の濃さ。
少し環境が変わるだけで、根の成長が大きく変わることもあります。
花農家の仕事は、こうした植物の個性を読み取りながら、ハウスの温度や湿度、水、光を細かく調整していくこと。
その花がいちばん美しく育つ環境を探していく仕事でもあります。
だからこそ秋山さんは、まず1年。
その花の「癖」を知る時間を大切にしているのです。

「聞く人がいないんですよね」
栽培方法も、正解も、すぐそばにはない、だからこそ自分で探る。
土を変え、肥料を変え、植え付け時期を変え、数年単位で試行錯誤を重ねる。
そうした試行錯誤を繰り返しながら、数年という時間をかけて、その花に合った育て方を見つけていきます。
ひとつの品目にかける情熱は、並大抵ではありません。
それでも秋山さんは、少し照れたように笑います。
「技術は残るから」
成功した経験も、うまくいかなかった経験も、次の栽培に必ず活きてくる。
そう考えているからこそ、新しい花への挑戦を続けていけるのかもしれません。
もちろん、これまで取り組んできた花がすべて成功したわけではありません。

けれどそれを、後ろ向きには語りません。
「失敗も、技術になる」
積み重ねてきた経験は、次に育てる花の土台になる。
だからこそ前を向き、また新しい品目に挑戦していきます。

「一般のお客さんの声は、届いていないんですよね」
その言葉が、少しだけ印象に残りました。
誰かの部屋に飾られたとき。
誰かの記念日に選ばれたとき。
その花がどんな時間をつくったのか。
生産者には、なかなか見えません。
だからこそ、この場で届けたい。
“花を愛でている人の声”を。
秋山さんは言います。
「自分で手を入れて、だれが作っても一緒じゃないものを作りたい」
試作を続け、数年かけてお花を理想の姿に仕上げていく。
その時間と情熱の積み重ねが秋山さんの技術と品質に積み重なる。
膨大な時間をかけてお花と向き合う。
それは“自分の花”をつくるため。
これからも、真摯に、静かに、花と向き合う日々。
けれど——
ここ北野町には、もうひとつ、大きな課題がありました。
次回、その土地と向き合う話へ。
つづく。
次回は、3月末に配信予定です。
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