連載#3 「継がなんっちゃろ」— 息子の静かな決意と、父の本音

2025/12/03

こんにちは!
medeluのフラワーデザインを監修している古賀です。
お花を愛でるみなさんに産地のことをもっと知ってもらいたくて記事の連載しています。

この連載では、私たちが普段手に取る花々を育てている人々に直接会って、生産にかける想いをうかがってきました。
その内容をお伝えしていきます。

第1回 バラ農家 楢原さんに伝統と未来を添えて
第2回 「想いだけじゃ、ダメだ」— 暗闇で見つけた、一筋の光

「継がなんっちゃろ」— 息子の静かな決意と、父の本音


楢原さんが時間をかけて一人で切り拓いてきたバラ作りの道。
昨年、その道に、最も信頼できる「相棒」が加わりました。息子さんです。

「息子は本当にしっかりしている。ある日、自分からポツリと『継がなんっちゃろ(自分が継がないといけないんだろう)』と言ってくれたんです」

その言葉を、道博さんは複雑な思いで受け止めました。

「嬉しかった。でも半面、経営への不安もよぎりました。正直、もしコロナ前の経営が不安定だった5年前に同じことを言われていたら、『悪いことは言わん、継ぐな』と反対していました。コロナが明けて、経営が少し安定してきた今だったから、『そうか』と受け入れられた。本当に、タイミングが良かった」

そして、こう続けます。
「でもね、投資ができないと成長できないとも感じていた。息子と一緒だからこそ、次の新しい投資ができる。未来への成長戦略が描けるんだと、逆に勇気をもらいました」

フラワーデザイナー古賀の視点

花農家は一族経営がほとんどだ。子や孫が事業を引き継いでいくことは珍しいことではない。
自分に置き換えてみると、親の仕事を引き継ぐということには抵抗がある。

たぶん「継ぎたい」といったところで反対されるだろうし、提案もしない。
そもそも親の仕事にさほど興味がないというのが本音だ。
だが、事業継承を果たした花農家のオヤジたちを見ていると思う。
かっこいい。

黙して語らずコツコツとやり遂げる熱意、弱音を吐かず苦境を乗り越える強さ――

子どもが憧れる姿を意図せずとも見せているから継いでくれる、
父親が人生をかけて築き上げたものを終わらせたくない、
自分も同じ道を歩んでみたい、そう思うのだろうなと。

花は、ただの「商品」ではなく
そこには、親から子へ、そして未来へと受け継がれていく想いがあります。
楢原さんの「続けてほしい」という願いと、
息子さんの「継がなんっちゃろ」という静かな覚悟。
そしてその姿を見て感じた、「花の背景には、人の生き方が映る」という気づき。
私たちが手に取る一本の花には、
こうした“見えない想い”が宿っています。
花を飾るその瞬間、
少しだけ産地の時間にも想いを寄せてもらえたら嬉しく思います。

次回予告 12月10日配信予定
第4回「父は、子供の頃からの目標でした」

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お父さんの背中を見てきた息子さんの覚悟、素敵です。応援しています!

2025/12/04

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