連載#4 父は、子供の頃からの目標でした

2025/12/10

こんにちは! medeluのフラワーデザインを監修している古賀です。 お花を愛でるみなさんに産地のことをもっと知ってもらいたくて記事の連載しています。 この連載では、私たちが普段手に取る花々を育てている人々に直接会って、生産にかける想いをうかがってきました。 その内容をお伝えしていきます。

第1回 バラ農家 楢原さんに伝統と未来を添えて
第2回 「想いだけじゃ、ダメだ」— 暗闇で見つけた、一筋の光
第3回 「継がなんっちゃろ」— 息子の静かな決意と、父の本音

「父は、子供の頃からの目標でした」

大学卒業後、楢原バラ園へ新卒で入りバラ生産に従事する日々が始まりました。
息子さんにとって、お父様はどんな存在だったのでしょうか。
「父は、子供の頃からの目標でした。自分が一番頑張れる理由が多い道を選べたと思っています」
そう語る息子さんのまなざしは、まっすぐです。 「実際に仕事を始めて、この大変さを身をもって感じました。この仕事を一人で長年続けてきた父のすごさを、改めて感じています」
日々努力を続けバラ生産の技術と知識を向上し続けています。
今、一番学びたいことは、お父様が持つ「目」だと言います。
「父の、長年の経験にもとづく観察力、そして判断力は本当にすごい。バラのわずかな変化に気付く観察力を鍛えて、父が思う『バラの良し悪し』の基準を、全部学び取りたい」

そんな息子さんを、お父様は「独立心も経営資質もある」と頼もしそうに見つめます。
「最近はもう、私から色々言うことはなくなりました。むしろ、『そんな雑用は父さんの仕事じゃない!』と息子から怒られるくらいで(笑)」

【フラワーデザイナー古賀の視点】

息子さんの「父は、子供の頃からの目標でした」というまっすぐな言葉を聞き、この継承は、単なる家業の引き継ぎではなく、「憧れを形にする挑戦」なのだと感じました。

楢原バラ園に入りまだ2年ですが、お話を伺う中で、彼の持つ「覚悟」と「冷静な資質」が、いかにこのバラ園の未来にとって重要であるかを実感しました。 実は息子さんは、大学では理工学部に在籍し、科学に興味を持っていたそうです。
一見、バラ栽培とは遠い分野に見えますが、この「冷静で論理的な視点」こそが、彼の強みです。

彼はインターン先の上司に相談するなど、一度は外の企業への就職も考えたといいます。
しかし、最終的にバラ園の門を叩いたのは、「技術的な部分を考えた時、すでに父が築いてくれた設備という土台があるからこそ、すぐに質の高い挑戦ができる」という冷静な判断があったからです。 ゼロから始める困難さを理解し、効率性を求め、すでにある資産を活かす。その視点は、すでに素晴らしい「経営資質」です。
そして何より、彼のバラへの情熱です。

技術や知識を貪欲に吸収し、たった2年で非常に高いレベルに達しているのは、ひとえに彼の集中力と覚悟の賜物でしょう。
他の生産者の方からは、現状への不安や、作業の厳しさといったネガティブな意見が聞かれることも少なくありません。しかし、彼からはそうした不安や不満といったネガティブな言葉が一切出てこないのが印象的でした。 彼は、自分がお世話をしているバラを心から愛しているのが伝わってきます。仕事の話をする時の目は輝いており、その姿は「仕事を好きになることが一番」というお父様の教えを、すでに体現しているようです。

また、ご友人をアルバイトとして巻き込んでいる点や、私たちの取材に対しても非常に協力的である点からも、周囲を惹きつけ、未来を共有できる「人柄の良さ」が溢れています。 息子さんから感じた「まっすぐさ」と「バラへの純粋な情熱」に触れ、すごく応援したくなる感情があふれてきました。
不安や不満を一切口にせず、常にバラの最善だけを追求する彼の姿勢。 私たちが彼の作るバラを愛する理由は、その美しい仕上がりだけでなく伝統という土台の上に、論理と情熱で新しい時代を築こうとする彼の「潔い覚悟」に、心を揺さぶられるからです。

希望に満ちた楢原さんのバラには、わたしたちの暮らし中に
揺るぎない確かな美しさと、前向きなエネルギーを運んでくれるはずです。

次回予告 12月17日配信予定
最終話 「未来へ踏み出す、新しい挑戦」

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ずっと花を撮ってきましたが、本当に一輪一輪の表情も違い、とっても奥が深いんだなと感じています。目を学びたいという想い、すごくすごく共感しました。 そして本当に素敵な表情からも優しい人なのだということが伝わってきました。これからもっと素敵なバラが作られていくこと、とても楽しみです。

2025/12/10

僕も父親に憧れて家業に入った一人です。初心に戻って襟を正そうと思いました。

2025/12/10

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